REPORT
第11回口頭弁論レポート
2023年
8月4日(金)
この日の弁論では、まず裁判長が、今までの女性の裁判官から、野口裁判官(男性)に替わりました。
今回の弁論は原告側が、被告グローと愛成会の関係者(現役、退職後などさまざま)の陳述書を提出しました。前回の弁論に提出した分を合わせると合計30通(含む原告二人)になります。これらの陳述書により、被告北岡が原告の二人に対してだけでなく、両方の社会福祉法人内でセクハラ発言や行為をしていたことが証明できます。
次回は、誰を証人として尋問するかを最終的に決めます。次回は9月25日(月)10時半から、631号法廷で弁論を行います。原告2人と被告北岡、被告グロー理事長牛谷氏の証人採用は固く、他の原告側の4人の証人候補について尋問を行うかは次回決まります。被告北岡に対して裁判所は尋問をすることを決めると思いますが、被告北岡の代理人は、尋問直前の体調によると条件をつけています。
証人尋問を行う日は、暫定的ですが、10月19日(木)(午前と午後)が原告側証人の尋問、12月11日(月)(午後のみ)が被告側の尋問と、仮に決まりました。(午前は通常10時から12時。午後は、通常1時から5時くらいまでです。法廷番号は未定です。)
この裁判も最後の詰めの段階に入りました。証人尋問の際には、傍聴席を満席にして、メディアにも取材してもらいますので、傍聴にいらしてください。
第10回口頭弁論レポート
2023年
6月1日(木)
この日の弁論では、証人尋問に向けての手続きが行われました。
原告側は、原告本人2名の他、愛成会の関係者二人、被告グローの関係者二人を証人尋問申請しました。そして、それら6名の陳述書も提出しました。
被告側は、被告北岡については、被告北岡の本人尋問の申請と陳述書を次回までにする予定であると言いました。ただ、被告北岡が抗がん剤を服用している関係で陳述書の提出や本人尋問ができるかは、被告北岡の体調次第とのことです。また、原告側は、被告北岡が5月の連休中に、東京都中野区の劇場に芸術監督として上京していたので、被告北岡の本人尋問は実施可能であると主張しました。
被告グローは、グローの代表者(現理事長)である牛谷氏を証人申請する予定であると主張しました。
次回は8月4日(金)の午後3時から東京地方裁判所517号法廷で弁論が開かれます。この日に、原告側、被告側から誰を尋問するかが決まる予定です。次回も不利な進行にならないよう、傍聴をよろしくお願いいたします。この6月1日は多くの方が傍聴されたおかげで、裁判官もいつもよりも公平な訴訟指揮をしていたように思います。
第9回口頭弁論レポート
2023年
3月6日(月)
この日の弁論期日では、被告北岡から準備書面が提出されました。主には、消滅時効期間(3年)に関する反論です。2007年(原告1)や2012年(原告2)から続いてきた被告北岡の数多くのセクハラ、性暴力について、被告北岡側は、個々のセクハラが終わるごとに3年の消滅時効は進行しているから、2020年に提訴するまでの3年間のセクハラしか裁判の対象にならないと主張しています。また、原告らは、退職や弁護士の力を借りて請求するまでに被告北岡を訴えることができなかったから消滅時効は進行しない、と主張していることに対して、意見をはっきり言うことができたはず、などと主張しています。しかし、これらはセクハラ、性暴力被害者の心理、とくに上司から被害を受けた場合の被害者の心理に沿った消滅時効の解釈ではありません。
また、この日は、今後の証人尋問の予定についても話し合われました。原告側は、原告本人2名の他に、被告グローと愛成会の関係者など4人を申請する予定と主張しました。被告グローは原告側の証言内容によって証人を出すか決めると答え、被告北岡側は、被告代理人が言うよりも先に裁判長が、北岡さんは無理ですよね、のような発言がありました。しかし、被告北岡は、多くのセクハラ・性暴力を否定しているので、裁判所としては被告北岡本人から尋問で聞く必要があります。裁判長の発言の公平性には疑問が残ります。
次回は6月1日(木)の午後2時半から東京地方裁判所517号法廷で行われます。そこでは、原告2人の陳述書と原告側4人の証人の陳述書が提出されます。そして、最終的に、原告側、被告側の誰を尋問するかを決めます。被告側に有利な進行にならないよう、たくさんの方の傍聴をお願いします。
第8回口頭弁論レポート
2022年
12月23日(金)
この日の弁論では、原告側(被害者側)から消滅時効に関して、民法の消滅時効研究の第一人者である松本克美教授の意見書と、性暴力被害者の心理状態に関する齋藤梓准教授(「性暴力被害の実際」の編著者)の意見書を提出した。
この裁判における原告2人の性暴力被害についても、3年の消滅時効期間が成立するかどうかが法律上の最大の争点である。2022年11月14日の大阪地裁判決は、幼少期に男子から受けた性被害について、消滅時効の成立を否定して被害者を救済し、米ニューヨーク州では、性暴力に関わる訴訟の期限を一時的に無効とする法律が施行された。それも証拠として裁判所に提出した。
実際にこの裁判では、被告北岡から受けた個々の性暴力、セクハラ被害の多くは、提訴より3年以上前に発生している。しかし、実際には加害者である被告北岡に逆らえない関係や仕事を続けていかなければならない状況や心理状態から、訴えるなどの責任追及をできるようになったのは、原告の鈴木さんがグローを退社してからであり、原告の木村さんについては被告北岡が愛成会の理事を降りた時からだった。
気になるのは、被告の反論が提出されなかったこと。被告代理人の説明では、被告北岡氏は重い病気で10月に手術し、その後再入院や投薬の副作用などで打合せができなかったとのこと。しかし、被告北岡氏はすでに動き始めているといううわさもあり、今後も本当に裁判の打合せができない状況なのかについて、原告側は厳しく見続ける必要がある。
次回の弁論期日(公開)は、2023年3月6日(月)15時から、東京地方裁判所517号法廷です。傍聴をお願いします。
第7回口頭弁論レポート
2022年
10月6日(木)
この日の弁論では、原告側の主張として、被告北岡が常時セクハラ発言をしていたことについて、職場の環境を悪化させる「環境型セクハラ」として、法律上も不法行為にあたるという主張書面(準備書面8)を提出しました。
環境型セクハラの代表例として挙げられるのは、職場にヌードポスターを貼るなどですが、これにより、職場の環境が悪化し、従業員の職務の遂行にも支障をきたすセクハラとして、厚労省の告示でも事業主が防止措置を負うべき対象とされています。
被告北岡のセクハラの言動は、これよりも更に悪質です。日常的に二つの社会福祉法人内の職場で、たとえば「セックスは何回しているのか?」「(女性に対して)男はできたか?」「俺を好きになってくれ」「(職員が)誰々と付き合っている、できている」「一回やらせてほしい」「(原告木村が)夜俺を寝かせてくれないんだよ(全くの虚偽)」「おっぱい触らせて」「女性同士でどうやってセックスするの?」など、普通の人間だったらはばかれるような言動を従業員に対して日常的に行っていました。そしてこの北岡のセクハラを擁護する男性役員もいたため、多くの女性従業員、役員は我慢しなければならない状況が10年以上も続いてきました。これらは新たな環境型セクハラによる不法行為と言えます。
次回の弁論期日では、被告北岡と被告グローが、以上の原告の主張と今までの原告の主張に対して反論する予定です。ただ、気になるのは、被告代理人が、被告北岡は10月の入院手術をしたばかりで裁判の打合せができる状況かどうかわからない、と言っていたことです。
次回の弁論期日は12月23日(金)午前10時30分から東京地方裁判所517号ラウンドテーブル法廷(傍聴可)で行われます。大勢の方の傍聴をお願いします。
第6回口頭弁論レポート
2022年
8月22日(月)
この日は、原告から、消滅時効(3年)の主張に対する反論と、被告北岡、被告グローの主張に対する反論の書面を提出しました。
消滅時効の主張では、民法の原則では加害者と損害を知ってから3年以内に訴えなくてはなりませんが、原告たちに対する北岡の最初のセクハラは2007年から(木村)、2012年から(鈴木)と、提訴した2020年11月からは3年以上が経過しています。そこで消滅時効の起算点を、10年にもわたるセクハラ・性暴力が終わって、弁護士やNPOの力を借りてから(木村)、退職してから(鈴木)、初めて訴えられるようになるので、その時点に時効の起算点をずらすように主張しました。専門家の意見書も今後提出していく予定です。
被告グローは安全配慮義務を尽くしたと主張していますが、セクハラの研修もごく簡単なものですし、なによりも理事長である北岡が積極的に性暴力、セクハラを行ってきたのですから、従業員への「安全に配慮した」などと言えるはずがありません。
また、被告北岡が常時セクハラ発言をしていたことの証拠として、愛成会とグローの職員で被害に遭った人たち9人の証言ビデオも提出しました。もっと多くの人がセクハラを目撃し経験していますが、そのうちのごく一部を動画で提出したものです。
次回は10月6日(木)午後4時から東京地方裁判所517号法廷で弁論が行われます。その時は常態化したセクハラについての主張の整理と議論を行う予定ですので、傍聴をお願いします。
第5回口頭弁論レポート
2022年
5月26日(木)
この日から裁判官が変わりました。被告らが反論の書面を出しました。
被告北岡氏からは、セクハラが常態化していたことに対する反論と、原告の木村さん(仮名)へのセクハラメールに対する反論がなされました。被告は、ほとんどのセクハラとパワハラについて否認するのみで、あとは不法行為の3年間の消滅時効を主張して責任を免れようとする戦法です。木村さんに送った「ご褒美に身体が欲しい」などのメールの存在はさすがに否定できませんでしたが、消滅時効の主張や違法性がないという主張をしています。
被告グローは、原告の鈴木さん(仮名)の安全配慮義務違反の主張に対して、義務は尽くされていること、代表者がセクハラをしたときにいかなる安全配慮義務違反になるのか、という反論をしました。
次回は8月22日午前10時30分から東京地方裁判所631号法廷で弁論が行われますので、傍聴をお願いします。次回は、原告側が、被告の消滅時効の主張に対する反論と、今までの被告らの事実面での主張に対する反論をする予定です。
第4回口頭弁論レポート
2022年
3月3日(木)
この日は原告2名の意見陳述が行われました。
原告の木村さんは、12年もの間、障害者等の芸術活動の仕事から離れたくない一心で、北岡氏のセクハラに耐えてきたこと、毎日のようにセクハラメールが届いていたこと、あまりにショックでしばらくそのような被害にあったこと自体が思い出せないPTSDの被害にあることが陳述されました。
原告の鈴木さんは、7年半もの間、グローで働いてきて障害のある人の芸術活動に触れ、やりがいのある仕事をすることができたこと、それを逆に北岡氏に利用され、北岡氏の業界における権力性がある中でセクハラが行われたこと、口止めもされたこと、グローが対応をしてくれなかったことなどを訴えました。
(詳しくは原告らの意見陳述書参照)
第3回オンライン記者会見の開催
2022年
1月18日(火)
提訴から約1年が経過し、長らく進行協議が続いていましたが、ようやく2022年3月3日に法廷での裁判が行われることが決まりました。そこでこの間の裁判の進捗を報告するため、2022年1月18日に3回目のオンライン記者会見を開催し、38名の報道関係者に出席いただきました。
笹本弁護士からは訴訟の進捗状況について、被告北岡氏と被告グローの反論内容などが説明されました。角田弁護士からは日本のハラスメントに関する法整備の問題点を解説していただきました。その後、2021年6月にグロー企画事業部文化芸術推進課の退職者有志の会が行ったハラスメント実態調査について、有志の会メンバーから結果概要とその分析内容について報告されました。
原告の鈴木さんは、ハラスメントや性暴力を受け続け、提訴するまでに年月を要した状況や、グローの現役職員から寄せられた声とともに提訴後のグローの対応への危機感について話されました。原告の木村さんは訴訟を決意した理由が語られ、その中で、福祉業界における就業者の多くは女性であるのに、経営層は男性で占められているという特徴的な構造の歪みに関して指摘し、また現職で働きながら訴訟を行う難しさを話されました。
最後に、『部長、その恋愛はセクハラです!』の著者牟田和恵さん(大阪大学・社会学)から、本訴訟のハラスメントについて分析いただき、権力構造や福祉業界の特徴から告発しにくい状況が生まれたことや、被害の実態が裁判で明らかにされるとともに、組織の在り方を問う検証が必要であるとのお話をいただきました。
裁判官との進行協議(2021.12.21)
2021年
12月21日(火)
2021年12月21日に、原告と被告の主張を整理するため進行協議が行われました(非公開)。内容は以下の通り。
・原告が被告北岡のセクハラ・パワハラを100の不法行為にまとめた一覧表を提出しました。
・被告北岡は、原告1(木村)について、具体的な反論をしました。原告1については、被告北岡が脱ぐ?と言うと、原告1が自分から服を脱ぎ始めた、などと荒唐無稽の主張を始めてしてきました。今までの交渉は裁判の中で、北岡は一度もそのようなことを言ってきていません。部屋に連れ込まれた当時、原告1はお酒を飲まされて意識を失っていたのをいいことに、被告北岡は偽のストーリーを作り挙げてきたのです。
その他のセクハラについても、単に否認するのが最も多いですが、中には、親しみの意味でやった、胸を触ったが違う時だった、などの反論をしてきています。これらについては今後徹底的に反論していく予定です。・法人としての被告グローも、安全配慮義務について、争っています。グローは、就業規則にセクハラ禁止が書いてある、相談窓口を設けたなどと主張していますが、どれも周知徹底されていませんし、実際に訴えてもとりあってくれていません。
裁判官との進行協議(2021.9.27)
2021年
9月27日(月)
2021年9月27日に、原告と被告の主張を整理するため進行協議が行われました(非公開)。次回も進行協議ですが、傍聴できる弁論(来年1月か2月頃)の際には、日程を早くお知らせします。
現在、原告が主張している被告北岡によるセクハラ・パワハラによる不法行為は、100以上の数に上り、これを原告準備書面2と3に整理して提出しました。
【1】原告2人に対する直接のセクハラ・パワハラ
【2】被告北岡が、日常的に女性社員らに行っていたセクハラの言動(環境型セクハラ)
【3】被告グロー(法人)の不法行為、安全配慮義務違反
からなっています。
被告北岡は、原告2人に対してだけでなく、社会福祉法人の女性職員などに対して日常的にセクハラを行ってきました。あいさつ代わりと言えるくらい頻繁でした。社内の会議や懇親会で、女性に下ネタや性行為の真似、性器の名前を連呼したり、「セックスはどんな風にしているのか」「何回しているのか」など公然と女性職員などに聞いたりしてきました。
女性職員たちは、不快な気分のまま仕事をせざるをえず、健全な労働環境の中で働く権利が奪われました。原告2名もこのようなことを、同僚から聞くことも多く、長い間我慢しなければなりませんでした。被告北岡から直接セクハラの被害を受けていなくても、他人に対するセクハラ言動を聞き続けなければならないのも環境型セクハラといい、不法行為を構成すると原告は主張しています。典型的な環境型セクハラは、職場にヌードポスターを貼るなどの行為ですが、不快な環境という点では、被告北岡が言いふらしているセクハラの場合も同じです。このようなことまで訴えなければならないほど、被告北岡のセクハラは異常だったのです。
裁判官との進行協議(2021.8.6)
2021年
8月6日(金)
2021年8月6日に、主張を整理するため裁判官との進行協議が行われました(非公開)。
訴状の構成は、
【1】原告2人に対する被告北岡のセクハラ・パワハラによる不法行為
【2】被告北岡が、両法人の中で日常的に行われていたセクハラの言動(環境型セクハラ)による不法行為
【3】被告グローの不法行為、安全配慮義務違反
で構成されています。被告北岡による不法行為を一つ一つ取り上げると100以上の数に上り、これを原告の準備書面2にまとめて提出しました。
この日は、これらの不法行為に対する証拠やさらなる整理のための話合いが行われました。もう一度9月27日に進行協議(非公開)が行われ、その後、11月ころには公開の法廷で弁論手続きが行われる予定ですので、法廷の日時が決まったら、本サイトにてご報告します。
第3回口頭弁論レポート
2021年
6月3日(木)
2021年6月3日(木)に第3回口頭弁論が東京地方裁判所でおこなわれました。裁判(弁論)は、原告側に対する裁判官の主張の整理の要求があり、主には技術的な内容でした。
原告が準備書面で主張した社会福祉法人グローの安全配慮義務違反の主張のうち、グローは、具体的にどのようなことをする義務があるのか、それに違反した事実は何かなどを次回までに整理して明らかにするように、とのことでした。また訴状・第4の北岡氏による常態化したセクハラの部分にとどまらず、原告2人に対する訴状の記述のどれが不法行為で、どれが事情・経緯かを分けて整理してほしいとのことでした。
7月末までに書面をこちらが提出し、それに対してその後被告側が反論するという形になります。次回は8月6日10時から裁判官室で主張整理のための弁論準備をすることとなりましたので、傍聴はできませんが、その次の弁論は法廷で傍聴可能な形で予定です。弁論の日時は8月6日以降に追ってお伝えします。
第2回オンライン記者会見の開催
2021年
1月12日(火)
2021年1月12日、1回目の口頭弁論を14日に控え、2回目のオンライン記者会見を開催し、45名を超える報道関係者に出席いただきました。笹本潤弁護士から訴状の概要や福祉業界における本訴訟の意義について、角田由紀子弁護士からは日本におけるセクハラ裁判の経緯や裁判官のジェンダー感覚について説明していただきました。原告の鈴木さん(仮名)からは2020年12月18日に社会福祉法人グローが公開した本訴訟に関する声明を受けての思いを、原告の木村さん(仮名)からは社会福祉法人愛成会のハラスメントに関する一連の経緯と新理事体制についての説明がなされ、両法人の対応の差異が明らかになりました。
第1回オンライン記者会見の開催
2020年
11月13日(金)
2020年11月13日に東京地裁へ提訴したことを受け、当会は原告2人と原告代理人の笹本潤弁護士によるオンライン記者会見を16日に行い、約30名の報道関係者に出席いただきました。会見では、笹本弁護士から訴訟に至った経緯や訴訟の意義について説明され、原告2人からは被害の実態や提訴への思いが語られました。